アジャイルコーチ活用術

2020/1/8のRegional Scrum Gathering Tokyo 2020での登壇資料です

1. アジャイルコーチ活用術 2020年1月8日 株式会社アトラクタ 取締役CTO / アジャイルコーチ 吉羽龍太郎 (@ryuzee)
2. 株式会社アトラクタについて ✤ 社名:株式会社アトラクタ 英文表記:Attractor Inc. / https://www.attractor.co.jp ✤ 設立:2016年12月 ✤ 所在:東京都港区 ✤ 開発プロセスに関するコンサルティングやトレーニングを提供 ✤ アジャイル開発 / DevOps / チーム育成 / クラウドコンピューティング / ドメインモデリングなどが専門領域 2
3. 登壇 各種イベントでの登壇 コーチング オンサイト トレーニング アジャイル開発やDevOps に関するオンサイトコーチ ング アジャイル開発や組織づくり に関するオンサイト トレーニング 認定研修 認定スクラムマスター研修 Suitable for all categories 等の主催 business and personal 執筆・翻訳 技術書やドキュメントの 執筆や翻訳 などなど
4. 自己紹介 ✤ 吉羽龍太郎 (@ryuzee) ✤ 株式会社アトラクタ取締役CTO/アジャイルコーチ ✤ ✤ 野村総合研究所、Amazon Web Servicesなどを経てアトラクタを創業 ✤ 開発プロセス/アジャイル開発/DevOps/クラウドコンピューティングが専門 Scrum Alliance Certified Team Coach (CTC) ✤ コーチングを受けることで認定スクラムマスター取得可能 ✤ Microsoft MVP for Azure ✤ 青山学院大学非常勤講師 4
5. 著書・訳書 5
6. 新刊 ✤ レガシーコードからの脱却 ―ソフトウェアの寿命を延ばし 価値を高める9つのプラクティス ✤ 2019/9/19 発売 3刷御礼 6
7. 研修のお知らせ ✤ 2020/2/6-7 認定スクラムマスター研修 (Joe Justice) ✤ 2020/3/2-3 Outcome Delivery Practitioner研修 (Gabrielle Benefield) ✤ 2020/3/5-6 認定スクラムマスター研修 (Gabrielle Benefield) 7
8. 今日は… アジャイルコーチを使ってみたい人向けに アジャイルコーチの活用方法を紹介します
9. アジャイルコーチとは
10. アジャイルコーチは何をする人? あなたのゴールは、他人から押し付けられるアジャイルの 行動規範に依存するのではなく、自分たちで考えることの できる、生産的なアジャイルチームを育てることです。 『アジャイルコーチング』より 10
11. ティーチングとコーチング ✤ ✤ ティーチング(指導行動) ✤ 経験や知識が少ない相手に対して、必要な情報や技術を具体的に教える ✤ 一方通行であることが多い コーチング(育成行動) ✤ 質問や傾聴などを使って、相手に自分自身で答えに気づいてもらい、自発的な行動を促す ✤ 双方向 11
12. 顧客の成長に対する責任度合い アジャイルコーチはコーチングだけ? カウンセラー コーチ パートナー 実行するのはあなたです。私はその 良し悪しを評価します うまくいきましたね。次回はこれも追 加してみましょう 私たちは一緒にうまくやってお互い から学習できます ファシリテーター 先生 モデル 実行するのはあなたです。私は実行 のプロセスに参加します この手の問題を解くのに使える原則 はこれらです 私がやってみせます。見ていればや り方がわかるでしょう オブザーバー 技術アドバイザー ハンズオンエキスパート 実行するのはあなたです。私が気づ いたことを伝えましょう そばにいて質問に答えましょう あなたの代わりにやります。やるべき ことは私が決めます 顧客の結果に対する責任度合い Douglas P. Champion, David H. Kiel and Jean A. McLendon. Choosing a Consulting Role: Principles and Dynamics of Matching Role to Situation. Training & Development Journal. 1990, February 12
13. アジャイルコーチとスクラムマスターの違い ✤ スクラムマスターはスクラムチームのゴール達成の共同責任を担う 13
14. アジャイルコーチが支援する領域の例 組織 問題設定 開発 チーム ✤ 適切な問題設定 ✤ ドメイン知識 ✤ 開発プロセス習熟 ✤ 明確なビジョン ✤ アーキテクチャ設計力 ✤ 心理的安全性 ✤ マーケットの理解 ✤ 開発言語 ✤ 透明性 ✤ 取捨選択 ✤ 性能 ✤ 検査と適応 ✤ 良いプロダクトバックログ ✤ セキュリティ ✤ ムダをなくす ✤ 優先順位付け ✤ インフラストラクチャー ✤ 学習 ✤ ステークホルダー管理 ✤ 自動化 ✤ リーダーシップ ✤ リスク・コスト管理 ✤ 品質・テスト ✤ オーナーシップ ✤ … ✤ … ✤ … 14
15. アジャイルコーチに何を依頼するか
16. 期待値を設定する ✤ コーチは銀の弾丸ではない ✤ ✤ ✤ ✤ 自分たちがコーチを呼ぶことで達成したい成果を明らかにする 期待値は1つとは限らない 数字の達成は 期待しないほうがいい ✤ 「初めてのアジャイル開発なので、王道のやり方でやりたい」 ✤ 「レガシーコードから脱却したい」 ✤ 「このプロダクト開発をなんとしてでも成功させたい」(コーチの守備範囲外ですが)など…… プロダクトバックログと同じで必ず優先順位付けが必要 ✤ 同時に複数のことを実現しようとすると、コンフリクトに悩まされて失敗する ✤ 組織の中で意思統一できていないことも多い(それ自体が問題) コーチが必要なのか、それともほかのスペシャリストが必要なのか検討する 16
17. 頻度や期間をどう設定するか ✤ 頻度や期間は期待値に密接に関係がある ✤ ✤ ✤ 予算にも関係はあるが、予算ありきにすると不十分な結果になることも コーチングの期間が短すぎると成果が出にくい ✤ チームの変化が目に見えるようになるまで、最低でも3か月位はかかる ✤ それを過ぎても変化がないなら、コーチや現場になんらかの問題がある ✤ 「プラクティスだけやっている」とそうなりがち フルタイムや長過ぎる期間を設定しても無意味なことがほとんど ✤ フルタイムや長期間の提案をしてくるコーチは疑うこと ✤ コーチ自身のゴールの1つは同一チームの支援がなるべく早く不要になること 17
18. よくある依頼のパターン ✤ ✤ 新規のアジャイル開発チームを立ち上げたい ✤ 準備期間(2〜4週間位)は、さまざまな検討が必要なので高頻度で ✤ 最初の方のスプリントは複数回、慣れてくるに連れてイベント中心に ✤ コーチとしていちばんやりやすい 既にアジャイル開発しているがサポートしてほしい ✤ 1〜4週間おきに現場に訪問したり、オンラインで対応したりする ✤ 既に苦境に陥っている状況だと、コーチとしても手の打ち方が難しいことも ✤ うまくいかない理由の多くはスタートに失敗している 18
19. コーチに依頼すべきでないこと ✤ ✤ ✕スクラムチームがやるべき「作業」をコーチに依頼する ✤ コーチはスクラムチームの一員ではない ✤ とくにプロダクトと組織に関することはアウトソースできない ✤ コーチは自分たちの「キャパシティ」を増やすものではなく、 「ケイパビリティ」(できること)を増やすための存在 ✕スケジュールやスコープなどの「達成」の支援を依頼する ✤ バックログの並び順やリリース時期などコーチが決められるはずもない ✤ ステークホルダーマネジメントをコーチだけでできるはずもない ✤ KPIの達成に責任を持つのは自分たち自身 19
20. アジャイルコーチの選び方
21. アジャイルコーチがカバーする範囲はとても広い 組織レベル アジャイルトランスフォーメーション / ポートフォリオマネジメント / 人事評価 / 採用 / リーン / 標準化 / …… 部署レベル リーンスタートアップ / プロダクトマネジメント / DevOps / CD /…… 複数チーム スケーリング(LeSS、Nexus…) / 分散 / アジャイルツール / マイクロサービス / …… 単一チーム コーチング / ティーチング / ファシリテーティング / メンタリング 実践経験 Scrum / プロダクトオーナーシップ / XP / CI / TDD / VCS / クラウド / UI / UX / コーディング / …… 21
22. 必然的にアジャイルコーチには継続的学習が必要 トレーニング セミナーやイベント ブログ アジャイルコーチ の道具箱 ディスカッション 書籍 実験 ほかの現場での経験 など…… 忙しすぎるアジャイルコーチのインプットは大丈夫なのか? (暇すぎるアジャイルコーチも怖い…) 22
23. アジャイルコーチの費用を考える 例1 例2 例3 1日の単価($) $1,000 $1,000 $2,500 月の営業日(日) 20日 20日 20日 全稼働時売上($) $20,000 $20,000 $50,000 有償稼働率(%) 80% 40% 40% 月次売上($) $16,000 $8,000 $20,000 手取り($、50%想定) $8,000 $4,000 $10,000 ✤ コーチのスキルがメンテナンスされていて、持続可能なのはどれ? ✤ 価格の安さだけで選ぶ意味があるか? 23
24. アジャイルコーチとの相性 ✤ コーチにはそれぞれ得意領域がある。全部をカバーしているコーチはほとんどいない ✤ コーチのスタイルにも違いがある(弊社内でも) ✤ 期待値を明らかにして、それにあったコーチを選ぶ ✤ ✤ 単一プロダクトのコーチングにエンタープライズレベルのコーチを雇っても効果はでない ✤ エンタープライズレベルの取り組みに技術中心のコーチを雇っても効果はでない ✤ アジャイルの実践経験のないアジャイルコーチを雇うのは悪い冗談 ✤ ONE SIZE DOES NOT FIT ALL それなりの期間一緒に働くことになるので、採用と同じように選ぶ ✤ コーチには個性的に見える人が多いので、合う/合わないはそれなりにある 24
25. よいアジャイルコーチを見つける方法 ✤ ✤ ✤ 最近はアジャイルコーチというタイトルを付ける人が増えてきた ✤ それ自体はとてもよいこと ✤ 名乗るのは自由なので、会社から「今日から君はアジャイルコーチね」みたいなのもある 期待値を明らかにしつつ、複数人のコーチに実際に会ってみよう ✤ 一緒に働く人を話さずに決められるはずがない。会って色々質問する ✤ コーチをインターネットで検索する。キャリアや得意分野などもわかる ✤ カンファレンスやイベントなどでの登壇資料をチェックする いちばん良いのはリファーラル(紹介) ✤ 採用と同じ ✤ 確率は上がるが、合う合わないはあるので会って会話するのは必要 25
26. アジャイルコーチの評価と終了
27. コーチの有効性の評価 ✤ これも期待値との比較で考える ✤ 組織に起こった数字の変化とコーチの支援の因果関係は多くの場合明確にはならない ✤ ✤ 組織が数字を見なくてよいという意味ではもちろんない ベースラインは過去との定性的な比較 ✤ 先月と比べてチームはうまく進められているか ✤ コーチとしてチームによい影響を与えられているか ✤ …… 27
28. いつコーチの依頼を終了すべきか ✤ ✤ もう自分たちだけでできると思ったら、支援を終了してもらうタイミング ✤ 必要なスキルや能力がチームや組織に身についた状態 ✤ 今生の別れになるわけではないので、一旦コーチなしでやってみて試してもよい 定期的にコーチと会話しながら、現在の状況を確認する ✤ 依頼者とコーチの1 on 1など ✤ 単一チームであれば半年くらいが目安 ✤ 組織全体であれば1〜2年程度が目安 ✤ 「顧問」などの役目で少しだけ稼働を残しておく手もある 28
No comments...
Attractor Inc. Founder / CTO / Agile Coach / Certified Team Coach / Certified Scrum Professional / Certified ScrumMaster / Certified Scrum Product Owner Twitter : @ryuzee Web : https://www.attractor.co.jp/ Web : http://www.ryuzee.com/

Related Slides