1. スプリントレトロスペクティブ Deep Dive 2025/1/8 Regional Scrum Gathering Tokyo 2025 fi 株式会社アトラクタ / Certi ed Scrum Trainer (CST) 吉羽 龍太郎 (@ryuzee)
2. 自己紹介 吉羽龍太郎 / Ryutaro YOSHIBA / ryuzee ▸ 株式会社アトラクタCTO /アジャイルコーチ / 翻訳者 ▸ Scrum Alliance 認定スクラムトレーナー ▸ X(Twitter): @ryuzee / https://www.ryuzee.com/ 2
3. 自己紹介 最新書籍紹介(買ってください!!) 2025年7月にケント・ベック氏来日!! 3
4. アトラクタのアジャイルコーチングで 持続的に成果を出し続けるアジャイルチームを作る 「あなたのゴールは、他人から押し付けられるアジャイルの行動規範に依存するのではなく、 自分たちで考えることのできる、生産的なアジャイルチームを育てることです」 書籍『アジャイルコーチング』(Rachel Davies、Liz Sedley 著、永瀬美穂、角征典 訳、オーム社、2017) なぜアジャイル開発では「コーチ」なのか 変化に気づき、対応するを養う 顧客志向の目的と行動様式を獲得する コーチの経験と知見の力を借りた素早い立ち上がり
5. 自己紹介 過去のDEEP DIVEシリーズ 5
6. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 今日のテーマ ▸ 今日のテーマは「スプリントレトロスペクティブ」 ▸ 「ふりかえり」ではない 6
7. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE スプリントレトロスペクティブと日本語の「ふりかえり」の違い (オタク向け) ▸ 「名前を付けることが知識の始まり」(アリストテレス『範疇論』) ▸ 物事を正しく理解し、知識として整理するには、それぞれの対象に適切な名前を与えることが必要 ▸ スクラムは既存の概念と区別するために、意図的に既存の用語とは違う用語を用いている ▸ 日本語の「ふりかえり」はスプリントレトロスペクティブよりも広い一般的な概念 ▸ 「過ぎ去った事柄を思い出す。回顧する。かえりみる」 出典:デジタル大辞泉(小学館) ▸ 「Retrospective」も「Re ection」も日本語では「ふりかえり」と呼ばれてしまう ▸ 「レトロスペクティブ」ではなく「スプリントレトロスペクティブ」にしているのにも意味がある ▸ 既存の別の単語で置き換えてしまうと、目的への集中が薄まり、余計なコンテキストが増える fl ▸ スプリントレトロスペクティブは「ふりかえり」よりも具体的な目的がある(本セッション) 7
8. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 2020年版のスクラムガイドは445文字(2017年版は793文字。当社調べ) 8
9. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 2020年版の変更による影響 ▸ 全体的に分量が削減された ▸ 指示的な要素が減った ▸ つまり、実践者自身で考えることを強く求めるようになった ▸ 過去のスクラムガイドは考えるときに非常に参考になる 9
10. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 本日の内容 ▸ スプリントレトロスペクティブについて ▸ 過去のスクラムガイドや実践者による解釈をもとに ▸ 細かいところまで見ていきます ▸ 資料はあとで公開します 10
11. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 11 スプリントレトロスペクティブとは? スプリントレトロスペクティブの目的は、品質と効果を高める方法を計画することである。 スクラムチームは、個人、相互作用、プロセス、ツール、完成の定義に関して、今回のスプリ ントがどのように進んだかを検査する。 多くの場合、検査する要素は作業領域によって異 なる。 スクラムチームを迷わせた仮説があれば特定し、その真因を探求する。 スクラムチ ームは、スプリント中に何がうまくいったか、どのような問題が発生したか、そしてそれらの 問題がどのように解決されたか(または解決されなかったか)について話し合う。 -- スクラムガイド2020
12. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE スプリントレトロスペクティブとは? ▸ 検査と適応を計画するためのイベント(※スクラムガイドの「スクラムの理論」参照) ▸ スプリントレビューはプロダクトの検査と適応 ▸ では、スプリントレトロスペクティブは何の検査と適応を計画するのか? ▸ 目的 「スプリントレトロスペクティブの目的は、品質と効果を高める方法を計画することである」 ▸ いきなり、「品質」と「効果」と出てくるが、何の品質、何の効果なのかよくわからない ▸ スクラムガイドは意図的に不完全 ▸ 解釈を考えてみよう ※ スクラムガイドで「スクラムでは、検査と適応のための4つの正式なイベントを組み合わせている。」とある 12
13. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 13 解釈1: インクリメント(プロダクト)の「品質」とスクラムチームの「効果」 ▸ 品質(quality) ▸ 他に3箇所あり、いずれもインクリメントの品質を指している ▸ スクラムガイド2017では、明示的に「プロダクトの品質を向上させる」とある ▸ 「スプリントレトロスペクティブでは、スクラムチームは作業プロセスの改善や「完成」の定義の調 整によって、プロダクトの品質を向上させる方法を計画する」 ▸ 効果(e ectiveness) ▸ 他に4箇所あり、プロダクトバックログの管理などでも使われている ▸ スプリントレトロスペクティブのセクションに以下がある ff ▸ 「スクラムチームは、自分たちの効果を改善するために最も役立つ変更を特定する」
14. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 14 解釈2: スクラムチームに関わるすべてのことの「品質」と「効果」 ▸ The purpose of the Sprint Retrospective is to plan ways to increase quality and e ectiveness. ▸ スクラムガイド2020のオリジナル(英語版)を読むと、冠詞もなければ「何の」を示す言葉もない ▸ 冠詞や所有格がないと、特定のものではなく一般的な概念を指すことが多い ▸ 特定の品質や効果ではなく、抽象的で広い意味を持つ概念を示している ▸ つまり、スクラムチームに関わるすべてのことの「品質」と「効果」(有効性)を高めると解釈できる ▸ 品質 = チームの作業方法の品質、プロダクトやインクリメントの品質…… ff ▸ 効果 = チームの働き方の有効性、プロダクトを届ける能力……
15. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 解釈の違いによる影響 ▸ 解釈1: インクリメント(プロダクト)の「品質」とスクラムチームの「効果」を高める(方法を計画する) ▸ 解釈2: スクラムチームに関わるすべてのことの「品質」と「効果」を高める(方法を計画する) ▸ 正直どっちでもいいのかもしれないが…… ▸ スクラムガイドのWebサイトで問い合わせをしたところ、解釈2に相当する回答が来た ▸ 解釈2のほうが幅は広い ▸ いずれにしても、品質と効果を判断するときの軸のほうが重要ではないか? 15
16. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 「品質」と「効果」を判断する大きな軸 ▸ 「スクラムとは(略)人々、チーム、組織が価値を生み出すための軽量級フレームワークである」 ▸ 「スクラムチームは、ゴールを達成し、お互いにサポートすることを確約する」 ▸ 「プロダクトゴールは、スクラムチームの長期的な目標である」 ▸ 「スプリントゴールはスプリントの唯一の目的である」 ▸ 「スクラムチーム全体が、スプリントごとに価値のある有用なインクリメントを作成する責任を持つ」 16
17. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE スプリントレトロスペクティブでは目的を踏まえて何を「検査」するのか? ▸ 「個人、相互作用、プロセス、ツール、完成の定義」 ▸ これらについて、今回のスプリントがどのように進んだかを検査 ▸ 検査する要素は作業領域によって異なる ▸ つまり、これらは一例に過ぎない ▸ 品質と効果の観点から、何を検査すべきか考える ▸ 大きな軸(価値・ゴール・有用なインクリメント……)を忘れない ▸ 毎回同じ要素を検査する必要もない 17
18. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 「検査する」とはどういうことか? ▸ スクラムガイド: スクラムチームでスプリント中のことについて話し合う ▸ 何がうまくいったか ▸ どのような問題が発生したか ▸ そしてそれらの問題がどのように解決されたか(または解決されなかったか) ▸ どういう形式で話し合うのかは決められていない ▸ なぜ「うまくいった」ことを話すのか? ▸ それを定着させ、再現性を高める ▸ モチベーションを向上させる、など 18
19. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE スプリントレトロスペクティブの参加者 ▸ スプリントレトロスペクティブは、スクラムチームのためのイベント ▸ [必須] プロダクトオーナー ▸ [必須] 開発者全員 ▸ [必須] スクラムマスター ▸ 「スクラムチーム全体が、スプリントごとに価値のある有用なインクリメントを作成する責任を持つ」 ▸ スクラムマスターも当事者として参加する (単なる司会やファシリテーター役ではない。後述) ▸ プロダクトオーナーも当事者として参加する (ヲタ) 2004年刊行『Agile Project Management with Scrum』(ケン・シュエイバー著)ではプロダクトオーナーはオプションだった 19
20. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE スプリントレトロスペクティブへのスクラムチーム以外の人の参加は? ▸ スクラムチーム自身がスクラムチーム外の誰かを呼びたい? ▸ スクラムチームは自己管理する(いつ・誰が・何を・どうやってやるかは自分たちで決める) ▸ スクラムチームの自由意思に基づいたものであれば可能 ▸ ステークホルダーが参加したいと言ったら? ▸ スクラムチームの意思に反するなら参加を断るべき ▸ Invisible Gun効果 ▸ 「見えない銃」を突きつけられている状態では、透明性が阻害され、効果がなくなる ▸ ステークホルダーはスプリントレビューに呼ぶ (余談)スクラムチームの同意なくアジャイルコーチが雇われてイベントに参加するのはよくない、ということになる 20
21. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 21 誰がスプリントレトロスペクティブの司会やファシリテーターをするのか? ▸ 司会: 会議やイベントの全体的な進行をスムーズに行う ▸ ファシリテーション: 中立的な立場で議論や意思決定のプロセスを支援する ▸ スクラムガイド2020では、司会もファシリテーションも登場しない ▸ スクラムガイド2017では ▸ 「(スクラムマスター) 必要に応じてスクラムイベントをファシリテートする」 ▸ つまり「必要でなければ」スクラムマスターがする必要はない ▸ スクラムチームは自己管理。誰がイベントの司会やファシリテーターをするかはスクラムチームで決定 ▸ 一般的にスクラムマスターがいつも司会やファシリテーターをするのは、機能不全の兆候 ▸ スクラムマスター不在でもできるようにする(例:ローテーションでスキルを身につける)
22. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 22 改善することを選ぶ スクラムチームは、自分たちの効果を改善するために最も役立つ変更を特定する。最も影 響の大きな改善は、できるだけ早く対処する。 次のスプリントのスプリントバックログに追 加することもできる。 -- スクラムガイド2020 ※ the most helpful changes なので1つではなく、複数のこともある
23. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE どんな改善を選ぶか?どのくらいの個数の改善に取り組むか? ▸ 品質と効果を改善する上で、最も役立つことを選ぶ ▸ スクラムガイドでは1つにしろとは言っていない (the most helpful changes) ▸ だが「最も役立つ」ことが多数あるはずがない ▸ スクラムの価値基準(確約・集中・公開・尊敬・勇気)を踏まえて、少数に絞る ▸ 「品質」と「効果」を判断する大きな軸を中心に考える ▸ それに関係ないたくさんの改善をしても効果は限定的 (スクラムチームの負担が増えるだけ) ▸ スクラムチーム自身ができることを選ぶ (組織への働きかけなどはスクラムマスターが別で対応) 23
24. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 24 たくさんやることは善ではない Simplicity--the art of maximizing the amount of work not done--is essential. シンプルさ(やらずに済ませる仕事の量を最大にする)が本質です。 -- Principles behind the Agile Manifesto ※日本語版「シンプルさ(ムダなく作れる量を最大限にすること)が本質です」は誤訳なので筆者が修正
25. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 改善のサイズ ▸ 毎スプリントで改善を検査できる程度のサイズにする ▸ スクラムでは、検査と適応の最大周期がスプリント ▸ プロダクトバックログアイテムと同様に改善のアイデアも仮説(妄想)に過ぎない ▸ 大きな改善のアイデアは小さな改善に分割する ▸ 改善できたかどうかをどうやって判断するかを決めておく (= 受け入れ基準) ▸ プロダクトバックログアイテムと同じ考え方 ▸ SMART ▸ 「うまくいったらどうなるの?」 25
26. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 改善のアイテムの対処と管理 ▸ できるだけ早く対処する ▸ 次のスプリントのスプリントバックログに追加する ▸ プロダクトバックログに追加する ▸ 対処しなければ、スプリントレトロスペクティブは無意味 ▸ 「忙しいから改善できない」 ではなく 「改善しないから忙しい」 ▸ 個人ではなく、スクラムチームとして全員の責任で集中して取り組む (個人にアサインしない) ▸ スクラムチームは自己管理なので、改善のアイテムは好きに管理すればいいが…… ▸ プロダクトバックログは「スクラムチームの作業の唯一の情報源」であることを踏まえる ▸ 管理しないといけないような大量の改善や、覚えていられないような改善で意味があるか? 26
27. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE よくある質問 「効果は大きくないけど、すぐできる改善はどうすればいいの?」 ▸ まず、最も役立つ改善に集中しろ ▸ それができている前提なら、取り組むことに意義はある ▸ スクラムチームが達成感を得ることができ、モチベーションが向上する ▸ どうせ実行コストは低いので、議論に時間をかけるより、リターンがある ▸ 改善に慣れて他の改善にもつながる ▸ 事後に実際の効果がどうだったのかは見てみるとよい ▸ 夢中になりすぎないようにする 27
28. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 28 次のスプリントを「楽しいもの」にする改善 スクラムマスターは、次のスプリントが効果的で楽しいものになるように、開発チームにス クラムプロセスフレームワークの範囲内で開発プロセスやプラクティスを改善してもらう。 -- スクラムガイド2017
29. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 29 「楽しさ」「幸福感」の重要性 ▸ 「価値あるインクリメントは届けられている。でも辛い。楽しくない」では持続できない ▸ 「人は成功しているから幸せなのではない。幸せだから成功するのだ」(『スクラム』p.194) ▸ ほんの少し幸福感が増すだけで、人間のパフォーマンスはぐっと上がる ▸ スクラムチームが有効であるためには、ポジティブな感情を持ち、創造性を発揮することが欠かせない ▸ 辛くなるだけの改善は、改善ではない ▸ 改善とは仕事を安全・簡単にすること
30. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 30 スプリントレトロスペクティブのタイムボックス スプリントレトロスペクティブをもってスプリントは終了する。 スプリントが1か月の場合、ス プリントレトロスペクティブは最大3時間である。 スプリントの期間が短ければ、スプリント レトロスペクティブの時間も短くすることが多い。 -- スクラムガイド2020
31. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE スプリントレトロスペクティブのタイムボックス ▸ 1か月スプリントで最大3時間。スプリントの期間が短いときはそれにあわせて短縮することが多い ▸ 単純計算で2週間スプリントで1.5時間、1週間スプリントで45分 ▸ ただし1週間スプリントの45分は短いことが多い ▸ 検査と適応を行うのに十分な時間を確保する ▸ 日々の仕事を一旦停止して、スプリントの切れ目を明らかにし、精神的な切り替えを可能にする ▸ タイムボックスなので早く終わっても構わないが、延長はしない ▸ 一方でイベントの時間をとにかく短くしたい、と感じるときは何かチームに異変が起きている ▸ たとえばスクラムチームの外側から何らかのプレッシャーを受けている ▸ 当然ながら、キャンセルしてはいけない 31
32. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 32 スプリントレトロスペクティブの大まかな構造の例 ▸ 1. 場を設定する ▸ 2. データを収集する この構造のなかでさまざまな技法 やフレームワークが利用できる ▸ 3. アイデアを出す ▸ 4. 何をすべきかを決定する ▸ 5. スプリントレトロスペクティブを終了する 『アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き』 Esther Derby、Diana Larsen 著、角 征典 訳 p.8〜
33. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 1. 場を設定する ▸ 本題に入る前に短時間で場を設定する ▸ 参加してくれることに感謝を示す ▸ 全員に口を開いてもらう ▸ イベントの冒頭で口を開くと主体的参加度があがる傾向 ▸ スプリントレトロスペクティブの目的を共有する ▸ 進め方を説明する ▸ 行動規範を共有する(PCやスマホの利用、発言の仕方などなど) ▸ ……これらは一例に過ぎない ▸ 検査と適応で適宜変更を加える 33
34. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 34 ノーム・カースの最優先条項 今日見つけたものが何であれ、チームの全員が、その時点でわかっていたことやスキルお よび能力、利用可能なリソースを余すことなく使って、置かれた状況下でベストを尽くした、 ということを疑ってはならない。 -- 『アート・オブ・アジャイル デベロップメント』 (James Shore、Shane Warden)
35. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 35 2. データを収集する (検査する) ▸ 前回のアクションアイテムの結果、スプリントでの出来事、メトリクス、インクリメントなどのデータを集める ▸ 数値で測れない定性的な意見や感想、感情なども貴重なデータ ▸ 意見と事実は区別がつくようにしておく ▸ 収集したデータをレビューして、パターンや変化などを見つける ▸ いつも同じデータを見ればいいというわけではない ▸ 毎週見るとよいデータ、月1回くらい見るとよいデータ……。頻度はデータによって違う ▸ 検査と適応で集めるデータを変える ▸ 役に立たないデータを取るのに時間を使うのは単なるムダ ▸ データをもとにスクラムチーム内の共通理解を形成し、検査する
36. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 3. アイデアを出す ▸ データを使って問題を抽出し、適応のアイデアを出す ▸ なるべく大きい問題にフォーカスする ▸ 先に問題を絞り込めることも多い(例: インクリメントを毎回届けられていない) ▸ アイデアにはリスクや副作用がある場合もある ▸ いきなり出した解決策が正しいことは多くないので、分析的に考える ▸ いま思いついた絶対イケてそうな機能のアイデアは1日経つとイケてないことが多い 36
37. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 37 4. 何をすべきか決定する (適応を計画する) ▸ (以下再掲) ▸ アイデアの中で妥当だと思えるもののうち、品質と効果を改善する上でもっとも役立つ項目を少数選 んで計画する ▸ もっとも役立つものに集中する ▸ たくさん選ぶ意味はない ▸ 必要であればプロダクトバックログアイテム化する ▸ 次のスプリントで取り組めるくらいのサイズと具体性(プロダクトバックログアイテムと同じ)
38. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 5. スプリントレトロスペクティブを終了する ▸ スクラムチーム自身のために、決定事項や議論の内容などについて記録を残す ▸ ホワイトボードや模造紙などを写真にとっておいても良い ▸ スプリントレトロスペクティブの進め方自体を検査し、次回の適応を検討する ▸ 感謝して終了する 38
39. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 39 スプリントレトロスペクティブの内容の取り扱い ▸ スプリントレトロスペクティブの内容をどこまでスクラムチーム外に出すかは自分たちが決める ▸ 「自己管理型であり、誰が何を、いつ、どのように行うかをスクラムチーム内で決定する」 ▸ ステークホルダーや組織全体に共有したほうがよいこともある ▸ 一方でスクラムチーム内にとどめておいたほうがよいこともある ▸ 個人の失敗はスクラムチーム全体の責任であり、個人名をスクラムチーム外に出すべきではない ▸ プロダクトオーナーやスクラムマスターがステークホルダーに報告していると、透明性や心理的安全性 に影響を及ぼす可能性がある ▸ たとえば、人事評価目的でスプリントレトロスペクティブの内容が外に出ているとしたら?
40. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 40 フレームワーク活用のメリットとデメリット ▸ フレームワークのメリット ▸ フレームワークのデメリット ▸ 手順が明確で誰でも実施できる ▸ 形式化によって創造性や柔軟性が失われる ▸ 繰り返しも容易で定着させやすい ▸ 同じものを使うとマンネリ化しやすい ▸ 流れに沿って参加者が意見を出しやすい ▸ 内容の深堀りが不足しやすい ▸ フレームワークごとに異なる視点を引き出し やすい ▸ 単なる作業になりやすい ▸ スプリントレトロスペクティブの目的や思想 と合致しないものもあり、効果が限定的にな ることがある
41. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE スプリントレトロスペクティブでフレームワークを使いたいなら? ▸ 複数のフレームワークを用意しておく ▸ 用途を把握しておく ▸ 良い本が複数出ているので、スクラムチームで輪読会をしてみるのもよい ▸ 状況によってフレームワークを使い分ける ▸ フレームワークを使わないときもあるとよい ▸ 選択したフレームワークがスクラムチームのそのときの状況で有効だったかを検査する ▸ どのフレームワークをいつ使うかは、スクラムチームが決める ▸ スクラムマスターだけが決めているなら不健全 41
42. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE フレームワークに頼らない例 (フリーディスカッション) ▸ たとえば、「スプリントごとに価値のある有用なインクリメントを作成」できていない場合 ▸ これがすぐに解決すべき問題であることがほとんど ▸ 「スプリントごとに価値のある有用なインクリメントを作成」できない原因の仮説を全員で洗い出す ▸ 全員で改善のアイデアを複数考える ▸ 全員で順番をつけて、少数の改善を選ぶ ▸ 次のスプリントで改善してみる ▸ 次のスプリントレトロスペクティブで評価する ▸ まだ、インクリメントを作れないなら、同じように繰り返す 42
43. スプリントレトロスペクティブ DEEP DIVE 43 スプリントレトロスペクティブでKPTをお勧めしない理由 ▸ KPTはシンプルで使いやすいが、アイデアが多くなりすぎる ▸ だが、スクラムチームは「最も役立つ変更」に集中することが求められる ▸ すなわち構造上の不整合がある ▸ アイデアの数が多いのでエネルギーも時間も分散してしまう ▸ 結果的に表面的な分析になりがち ▸ 出たアイデアの多くは選ばれない(せっかく出したのにムダ) ▸ それにも関わらず繰り返し登場するので、チームのモチベーションが低下する ▸ アイデアの量産に価値があるときは有効なので、プロジェクト終了時とか、四半期ごとのまとめとか、そう いうときに使うのがよい ※ 熟練度が高いチームで改善能力が高い場合は、うまく機能することもある